Diary - 制作日記

★28:IGDA SIG-Indie9 同人ノベルゲーム開発から流通まで2012/09/24 (月)  02:30

9月15日(土)にIGDA SIG-Indie(同人・インディーズゲーム部会)の
第9回研究会「同人ノベルゲーム開発から流通まで」
に行って来ました。

詳しくはGameBusiness.jp様のレポートを参照していただければと思います。
※外部リンク

正直、上記リンク先のレポートが詳しく書かれているので私が書く事がないのですが…(;´Д`)
せっかく行ったので、自分なりに取ったメモや考察などを掲載してみようと思います。

IGDA公式の方でも後に講演資料,ビデオのアップがされるようです。

Twitter上などでもあまり情報が出ていなかった感じもしましたしね。

何時ものお約束ですが、ここに書く事はあくまでも私なりの解釈・メモであり、
発表者の真意とのずれのある可能性がある事に注意してください。

※公式でも発表者の発言がIGDAの公式認識では無い事は明言されております。


①「ラノベ作家がひとりでギャルゲを作った方法と、キャラの創作法」
講演者:七月 隆文 さん

講演者はライトノベル「俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件」等を執筆されている七月さん。

ライトノベル作家としての活動だけでなく、同人ノベルゲームの開発活動を行っていたとの事で、
その振り返りというご講演でした。

■製作の流れ

・製作ツールはNScripter
 開発はお一人で行っていた様です

・制作過程
 ①プロットを作る(全ルート)
 ②シナリオを書く
 ※シナリオは最初からスクリプトと合わせて打ち込んでいく
  背景素材などはとりあえず仮の素材を置いていく

・音楽素材も並列して製作する。(ご自身で作っていたようです)

・この時点では立ち絵は無し
 どういった演出にするかなどは注釈として入れておく

・立ち絵が無くてもノベルとして読める
 読みやすさの調整や演出を並列して行っていく

・背景絵は写真を撮って加工して作成する
 写真を撮る→photoshopで加工(カットアウトやグレデーションなどを使用)
 写真からでも「らしい」背景素材は作れる

■一人で作るメリット/デメリット

<メリット>
・開発費が安い,やりたい事ができる…etc

<デメリット>
・到達クオリティに限界がある…etc

■キャラの立て方

ご自身が製作された「天使郷」のヒロインの例

①「日本語しか話せない外人の女の子って面白そう」という着想(トリガー)

②妄想
 トリガーから妄想を膨らます
 外見、固有の趣味…ふと思いついたシチュエーションなど

③清楚系などの属性、口癖を決める
 手っ取り早いキャラの固め方として「口癖」
 口癖はキャラクターがどういった属性なのかが分かりやすい

・キャラクター配置の考慮
 導入部の説明などの為、狂言回しのポジションが欲しい
 →「いとこのお姉ちゃんっていいよね」

・バランスを考えてキャラを置いていく事も必要

・シナリオと配置のバランスからキャラを逆算していく

■プロットについて

ギャルゲにおけるプロット作りは、そのヒロインの魅力を引き立てる事
意識して作るのが望ましい。
→これはギャルゲだけでなく、ラノベ・他分野にも適用できる考えである

■質疑応答

Q.どれくらいの容量なのか?
A.全5ルートで小説5つ分くらい(1MB)の容量

Q.開発期間はどの程度か?
A.開発期間は仕事の合間に進めて3年半くらい
 実質は1年程度

Q.開発期間はどれくらいなのか?
A.バグチェックなどはほとんど一人で行った
 NScripterは間違えがあればきちんとエラーを返してくれるので、一つ一つ潰していった

Q.パブリッシングはどのような手法を取ったのか?
A.元々同人グッズなどを作っていた
 同人は流通・生産・委託のシステムが整っており、手続きに従っていけばOK


②「多言語対応ノベルゲーム制作の舞台裏と、世界5カ国&オンライン頒布を振り返る」
講演者:マサシロウ さん

マサシロウさんは過去にもSIG-Indie8で講演を行っていた…はず。
今回の内容も前回の内容と重なる部分が多かったですが、とても貴重なお話でした。

(詳しくは過去のレポートを参照。
「同人ノベルゲームの多言語化対応の開発よ海外頒布を振り返る」の部分)

内容はマサシロウさんの属するサークルぜろじげんで開発した、
多言語対応ADVゲーム「こえんちゅ」の開発についてのご講演。

■多言語開発を振り返る

・開発の動機は、2009年にPCゲーム界で問題となったレイ○レイ事件。
 鎖国状態の日本メーカー。
 「みんなが行かないなら、俺たちで行くか!」

・海外のスタッフはLemma Soft Forumという海外の開発者向けのフォーラムを使用して集めた
直ぐにという訳では無く、何度かアイスブレイキングを行いコミュニケーションを深めていった

・価値観の共有が大切

■製作のシステム化

・人がやるところは人、機械が出来るところは機械でやる

・まずはメモ帳で台詞などを打ち込む

・変換ツールにてスクリプト用xmlに起こし、これを台本(日本語・多言語)のファイルに翻訳
 これらは世界共通のエクセルファイルでまとめられる
 ドロップボックスを利用し、受け渡しを行う

・それらを吉里吉里に実装

・Skypeで進捗報告

<メリット>
・誰でも編集が容易であり、分散して作業ができる

・翻訳などで無駄な説明を省ける

<デメリット>
・独自のルールが多い

・更新を頻繁に行う必要がある

■ポイント

・ボイス収録にあたり、現地で1名の担当者を立てる
 この担当者には全体の流れを説明する
 (一人辺りのコミュニケーションラインを少なくする)

・進捗確認し、製作以外のチャットなども行う
 1週間に最低1回は進捗確認を行う
 「相手は多分こう考える」と勝手に考えない

・良いものは褒める。やって欲しい事は事前に伝える

・漫画を製作し、実際にゲームの中身を伝えやすくする、などの工夫も

・英語は上手い必要は無い
 中学生レベルでも何とかなる、との事

・ゲーム内で使用するフォントに注意
 海外では入っていないかもしれない

・国・地域で使える記号・呼び方(表現方法)の注意
 例えば「ポニーテール」はスペイン語では馬の尻の事で「馬鹿」という意味になってしまう
 他にも「プリクラ」は一体何なのか分からない
 アニメ・ゲームネタはローカライズの必要がある…など

・海外のイベント(コンベンション・即売会)には色がある
 女性の割合が多かったり、日本ライクだったり、24時間ぶっ続けだったり

・海外でノベルゲームを遊びたい人は沢山いる
 中には仕方なく共有ソフトを使って遊ぶ人もいる現状


③「iPhone/Androidスマホ向けノベル/ADVゲームの作り方」
講演者:御影 さん,Kazu さん

スマートフォンに対応したノベルゲームの開発についての現状、市場、制作の流れなどについてのご講演。

近年、スマートフォンでもゲームを遊ぶ人が増えてきており、時代に合ったご講演でした。

■スマートフォン向けノベルゲームエンジン

ONScripter
NScripter互換ありだが、非公式

KAS
吉里吉里/KAG互換

Artemis Engine
WindowsでAndoroid/i-OSどちらにも対応したノベルゲーム開発が出来る

■スマートフォン向けゲームのマーケット

[i-OS]AppStore
 i-OS向けアプリはこれ一択
 年間8,400円かかり、マージンは30%
 審査が厳しく、アダルトはNG
 水着などの際どいラインはアプリ紹介のSSに使わなければ大体大丈夫
 スマホ向けマーケットの中では売れ行きが良い方

[Android]GooglePlay
 年間$25.00かかり、マージンは30%
 事後審査であり、ユーザークレームに対応する形で審査が行われる
 ここに登録するだけではDLしてもらえない為、あくまでファイル置き場として考え、誘導は別に考える必要がある

・アダルトは現時点ではi-OSでは無理
 ただしAndroid向けにアダルト同人ゲームを扱うサードパーティマーケットが出てきている

■OS別のメリット/デメリット
機種 メリット デメリット
i-OS

・機種数が少なくチェックが容易
(実質i-phoneしかない)
・AppStoreにおけばそこそこDLされる

・開発にはMac OSが必要
・Apple Developer Programへの加入が必要
・英語サイトでとっつきにくい操作
・Xcodeという開発ツールが必要
・審査が厳しめで時間がかかる

Android

・Windows, Mac, Linax何れでも開発が可能
・販売までの手続きが簡単
・サードパーティマーケットならば
アダルト可

・機種数がとても多く、動作チェックが出来ない場合、
動かない機種が出る恐れがある
・なかなかDLしてもらえず、他の誘導を考える必要がある

■製作の流れ・ポイント

・企画
 「少人数」「短時間」がベター
 小規模が無難

・素材
 ダミー素材を利用したり製作を効率的に進める
 割り切りが大事である

・値段設定や課金の工夫
 有料・シリーズ化など
 アプリ内課金

・解像度
 スマホでは機種によって画面サイズが違う
 しかしどれがベスト、という明確な回は無い
 1280×720(16:9)が無難な模様

・画面構成は横にした方が情報量を多くできる
 (縦では文字の表示量が横と比べて少ない)

・UIのボタンなどはボタン画像の右下に余白を持たせておくと押しやすい
 指で押した場合に、意識しているポイントの右下に摂食する事が多い為

・女性向けならばボイスは特に重要…らしい

・電車の中や布団の中でプレイする人が多い
 1時間くらいで終わらせられる規模が良いそうだ
 なるべく小分けにするなど

・マクロなどを活用しよう

・アプリのアイコンや作品タイトル、プレイ動画なども大事


④「ノベルゲーム作家のキャリアパス」
講演者:玉川 博章 さん

実際のデータを交えつつ、シナリオライター・イラストレーターの二つの分野について
どの様なキャリアパスが考えられるかというご講演でした。

■同人作家の商業経験の意向

・2003年では商業に興味を持つ同人作家は多くは無かった
 しかし近年では商業・プロでの活躍を望む人が多い

・同人ノベルゲームに近い分野
 PCゲーム(所謂え○げー),コンシューマゲーム(ADVなど),ライトノベル

・新品ゲーム市場において、ADV分野は469億円の規模
 これは全体の約16%でNo3の分野となっている
 しかし、「ゼルダの伝説」などアクションアドベンチャーの分野も含まれている
 実際はノベル自体は小規模

・成人ゲームは平均4,000~5,000本の出荷本数

・小規模ではあるが、同人サークルからの起業の例があり
 起業を支援する支援ビジネスもある

・ライトノベルは約270億円規模の市場
 印税は1割程度だが、作家とイラストレーターに分配される

■賃金

・シナリオ
 最低1KB(512文字)あたり約1,100~2,000円

・イラスト
 月額固定,一枚当たりの単価性


⑥「質疑応答―パネルディスカッション」

最後にはSIG-Indie恒例の質疑応答(パネルディスカッションが行われました。
今回は海外展開についての話に興味を持った方が多かったようで、
海外における表現問題、オンライン配信における法律、について等々の質問が飛び交っていました。


以上が本研究会のメモです。
今回もためになる情報量が多く、聴くのにもメモを取るのにも精一杯でした!

■ 感想・考察 ■

ノベルゲームは同人ゲームの中でも人気の高いジャンルで、現在では浸透し受け入れられやすいジャンルであると思っています。

開発環境も整っており、開発しやすさもあります。
今回の研究会では多言語対応やスマートフォンプラットへの適応など、
今までの作って即売会で売る、という段階から一歩進んだお話でありました。

これらはノベルゲームの開発環境と流通・生産・販売のシステムが整っているという事も、
促進する要因になったのではないかな、と思いました。

勿論、簡単な話ではありませんが、今回の公演でそれらが現実可能である事が示されたと言えます。
これらのノウハウは更に広い舞台で活躍しようと考えている方々には、
とても貴重なお話だったのではないでしょうか。

同人という世界も段々と変容して、プロ・商業・世界…様々な境界が曖昧になってきているのかもしれませんね。
そうしてまた新しい形が生まれていく…そんな気がします。

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